『Beats by Dr. Dre』シリーズはBeats Electronics社の製品で、Dr. Dreによるチューニングが施され、Monster Cable Products社が製造するヘッドホンのブランドです。
全体としてはモニタヘッドホン志向の味付けでありながらも、ヒップホップ界の重鎮らしい迫力ある重低音を再現したチューニングで根強い人気があります。
特徴のある平たいケーブルを採用したインイヤー型ヘッドホン『Tour with ControlTalk』(MH BTS IE CT)などは、特によく街の中でも見かけることが多いのではないでしょうか。赤い平型ケーブルと〝b〟のロゴは遠くからでも大変目立ちます。
もう少し(外見的な)味付けのおとなしいシリーズとして『ibeats with ControlTalk』(MH IBTS IE CT)があり、こちらはケーブルが通常の丸形でありながらも重低音の強いモニタという方向性は変わらず、堅実なラインです。
このヘッドホンとスペック的には同一ながら付属品や有線式リモートコントロール〝ControlTalk〟部分の仕様が異なる(Android向けとなる)、〝Beats Audio〟などと呼ばれるHTC社『Sensation XE/XL』の付属ヘッドホンが多少安価に売られています(※参考)。
市場には偽物も出回っている(※参考: 日本国内正規代理店からの警告)ため、あまりにも安いものは出所が怪しいのですが、このHTC製携帯電話機に付属したものを入手したので、レビューします。
元々ソニー『MDR-EX800ST』や『MDR-EX700SL』、JBL『Reference 220 (後継Ref.250)』といった、ピュアな味付けのモニタヘッドホンが好みである筆者には、ここ最近のブームであるバランスドアーマチュア(BA)式のヘッドホンの、まるで異次元から音を鳴らされるような趣向は苦痛と言っても過言でないくらいには耐えがたく、ダイナミック式で適度な密閉性を持つカナル型・できればRef.220よりもう少し低音寄りのほうがよい、という条件で試聴を繰り返し、Beats『Tour』は及第点ではないかと感じました。
Tourは平形ケーブルも大変かっこいいと思うのですが、ちょっと若向きな感じなので〝もう少し落ち着いたものを〟ということで『ibeats』が選択肢となりました。
音の傾向と外見、付属品について
ソニーやJBLのモニタ系サウンドは大変フラットで再生可能周波数帯をできる限り全域で鳴らしきろうとしますが、Beats社(の特にDr. Dreシリーズ)は40〜80Hzあたり(言うなれば低音域)を強めに・10k〜12kHzあたり(同、中高音域)を弱めにすることで音へのメリハリを付けているような方向性を感じます。ただし、いわゆる〝ドンシャリ〟のような、極端というほどの過激な味付けではありません。
人の可聴周波数帯が(ある種の宗教じみた、ハイパーソニックなどといった概念を考慮せず)一般に20Hz〜15kHz程度と考えると、ほぼ全域をカバーしながらも、音作りとしては低音にはっきりと人の意思の介在が感じられる、パワフルなサウンドを鳴らしてくれるデバイスです。
iPhoneやiPod touchは、価格的には数分の一であるiPod nanoと比較してですら中音域がスカスカですが、純粋なモニタではないことがよい方向に働いて、中音域を含めた音場感は充分に感じられます。Apple純正イヤホンのような、高音域がシャリシャリして耳につくような感じもありません。
ヒップホップやR&Bといった、音圧の強そうなイメージから連想して、80年代ソニー全盛期のMEGABASS的なサウンドを想像していると、それとはまったく方向性が異なります。
ヘッドホンはメタルハウジング(おそらくアルミニウム)で構成され、ケーブルは大変しなやかです。なお、HTC社向け製品ではホワイトのモデルが『ibeats』・ブラックのモデルが『urbeats』とロゴが入っていますが、製品自体のスペックとしては同一のものであるようです。
イヤーチップは1段式ゲルタイプのものが5種類もの豊富なサイズで付属していますが、アメリカ企業らしい〝みんな違うから全部試して!〟といったラベルが付与されています。
ソニー的なサイズとしてLL/L/M/S/SSと考えた場合、筆者にはSサイズに該当する2番目に小さなものがフィットしました。
Beats社純正品では〝ControlTalk〟であるべき部分のコントローラは、iPodやiPhoneではマイク機能と中央ボタンのみが再生/一時停止/通話ボタンとして機能します。つまり、通話関連機能(と再生/一時停止ボタン)のみ使用可能で、上下の曲送りボタンは残念ながら使用できません(※この上下ボタンはBeats社純正品では音量ボタンになっています)。この部分はクロームメッキで仕上げられています。
細身の3.5mmヘッドホンプラグは、初代iPhoneのような極めて細いジャックにも適合します。もちろん、iPhone 4/4S向けBumpersでも大丈夫です。プラグにもきちんとメッキが施されています。
プラグはストレート形状のため、L字型のプラグがよいという向きには『Tour』がよいでしょう。
ヘッドホンケースとして袋状のケースが付属しますが、それほど使い勝手のよいものではありません。とりあえずオプションを含めて収納できる程度のものです。
ケーブルやハウジングなどのパーツ交換ができるヘッドホンもここ数年の流行ですが、そういった製品は今のところBeats社の製品としては存在しません。
関係先各社の複雑な関係
ところで、何故HTC社の携帯電話機にこのヘッドホンが付属するかというと、HTC社はBeats Eelectronics社の株式を過半数以上取得している筆頭株主であり、iPhoneよりも音質のよい対抗デバイスとしてAndroid搭載デバイスを差別化して拡販したい思惑があるから、という深いような深くないような事情があります。
しかし、Beats社として単品販売している製品は主にiPhone用のコントローラが付属しています(Android用としてはHTC社向けのものしかありません)。また、製品の製造元であるMonster Cable社もApple製品向けのケーブルを長く供給してきた経緯があります。
HTC社+Beats Eelectronics社とMonster Cable社の業務提携は2012年度(2012-Q1)をもって解消される見込み(※参考)のため、今後の製品は別の製造元となる(つまり、チューニングや志向性が変わる)可能性があります。各社の利権や目論見が絡んだ、大変複雑な関係です。
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