DO NOT PAY FOR JAILBREAK YOUR DEVICE!

最近、『NTTドコモのSIMカードでLTEを使えるようにする』『ソフトバンクやKDDIで月額を払わなくてもテザリングができるように』などのフレーズで『CommCenter* patch』や各種キャリアバンドルをインストールする代行業者があるようで、たいへん多くの「どのような関係性があるのか」「無償で提供しているように見せかけてカネを取るのか」「いくら儲かるのか」といった問い合わせを受けています。

これらの悪質な業者と我々は、いっさい関係がありません。Jailbreakは無償で提供されるべきものであり、これを商用利用すべきものでもありません。 [続きを読む »]


2011年10月5日水曜日

iPhone 4SとCDMA 2000について、今知っておいてほしいこと

おおかたの予想どおりのスペックで、『iPhone 4S』が発表されました。端末自体については、ある程度正確な情報に触れられる立場にあったため特に感慨はないのですが、ローレベルな携帯電話ネットワーク周りのハッカーとして、報道ではあまり詳しく掘り下げられなさそうな部分について触れておこうと思います。

iPhone 4Sのデザインについて

〝iPhone 4と比べてミドルフレームのデザインが変わった〟というのは厳密には正しくなく、ミドルフレームの絶縁体の位置に関しては既にVerizon版のiPhone 4で採用されていたデザインであり、これはCDMA 2000が規格としてクロスしたダイバシティアンテナを要求するために設計変更されたものです。

これによってiPhone 4のケースが使用できなくなるという説がありますが、いわゆるGSM版iPhone 4(W-CDMA版を含む)専用で〝タイトに〟設計されたケースはサイレントスイッチの位置が異なるために使用できなくなるというのが正しいです。米国などで設計されたケースであれば、この開口部が大きく設けられていて両対応になっていることが多いです。

CDMA 2000の仕様について

CDMA 2000には、規格上〝SIMカード〟という概念がありません。KDDIはauブランドの携帯電話に、SIMカードにとてもよく似た『R-UIMカード』を採用しており、またほぼ同一のCDMA 2000向け規格として『CSIMカード』というものが存在しますが(両者の大きな違いはGSMネットワークの対応可否)、これは(GSM/W-CDMAにおけるSIMカードの主な役割である)契約者情報の管理というよりも、コンテンツの権利検証・復号鍵としての意味合いが強い(つまり日本のTVにおけるB-CASカードに近い)ものです。

CDMA 2000端末としてのKDDIローカル仕様について

KDDI端末におけるR-UIMカードは、どちらかといえばFelicaやワンセグといった契約者情報の認証が必要なコンテンツの鍵として使用されるもので、CDMA 2000ネットワークが使用する契約者情報は一貫して端末本体内の記憶領域に書き込まれます。基本的には(少なくともKDDIの携帯電話では)新品の携帯電話端末が起動された際に、挿入されているR-UIMカードから契約者情報を本体内に複製し、以降はR-UIMカードの当該領域を使用しません(これがKDDIの携帯電話に存在するレベル2ロックの正体であり、auショップでのロッククリアとはこの領域を消去する作業です)。

VerizonやChina Telecomなどの一般的なCDMA 2000端末には最初からR-UIM/CSIMカードが存在せず、この初回作業をショップでのケーブルアクティベーション時に行います(KDDIでもたとえば『HTC EVO』はそのようになっています)。

iPhone 4Sに関しては、CDMA 2000事業者から購入した場合は同じように本体内部の領域を使用するとApple公式に表明されており、おそらくKDDIであっても〝microR-UIMカード〟といったものは使用しません(※KDDIでのみ使用するという情報もありますが、もしそうだとした場合はこれはおそらく国際ローミング対応のためだと考えられます)。この際にベースバンドやlockdowndは、microSIMカードスロットを〝存在しないもの〟として扱うようになるようです。

10/14 追記
正式発売されたKDDI版iPhone 4Sでは結果として、microR-UIMカードを発行しつつもL2ロックがなく、KDDI版のiPhone 4S間でR-UIMカードを挿し替えて利用できる、という形態になりました(保護されたメモリ内にR-UIM情報のコピーを展開する、L2ロックのないIS06やISW11Mなどと同じ方式)。また、海外ローミング時に現地事業者のCDMA 2000やW-CDMAにもローミング可能です。
ただし、iPhone本体におけるキャリアロックは存在していて、かつiTunesによるアクティベーション時にR−UIMカードの正当性を検証するため、不正なR-UIMカードや他社のSIMカードではアクティベーションを行うことが出来ません。そして、海外において現地のSIMカードなどを挿して利用することも出来ません(つまり、海外利用においてはKDDIによる国際ローミングである必要があります)。

CDMA 2000版iPhoneのネットワークロックについて

また、KDDIやVerizonはiPhone 4Sを〝キャリアロックのある状態で販売する〟と表明しており、CDMA 2000事業者からロックフリー端末が売られるという情報は今のところありません(少なくともKDDIに関しては、カントリーロックまたはオペレータロックということもなさそうです)。ワールドフォンとしての国際ローミングも、GSMへのローミングは明言されていますが、W-CDMAへのローミングに関しては表記がありません。Apple公式にも、アンロック版はCDMA 2000事業者で使えない旨の注意書きがあります(KDDIもSIMロックフリー/アンロック版のiPhone 4Sを持ち込んでの契約は認めていません。この場合はKDDIから販売された端末である必要があります)。

参考
http://store.apple.com/us/browse/home/shop_iphone/family/iphone/iphone4/about_unlocked

iPhone 4S自体はGSM(W-CDMA)/CDMA 2000のデュアルネットワーク対応ですが、これらの区別と固定はおそらくiTunes/OTAでのアクティベーション時に行われ、CDMA 2000事業者から販売された端末識別番号を持つ本体については、以降もずっとCDMA 2000端末としてAppleのサーバーからアクティベーションされるようになると思われます(少なくとも現段階では、正規にGSM/W-CDMA向けとしてアンロックする手段は発表されていません)。

このため、CDMA 2000として紐付けされたキャリアロック付き端末のアンロックに関しては、GSM/W-CDMAキャリアから販売されたものよりも難航しそうな気がします。また、GSM/W-CDMA版をCDMA 2000ネットワークで利用することも難しそうです。

本体の発売後、様々なハッカーがベースバンドやlockdowndなどの脆弱性を探し、CDMA 2000版の対応ネットワーク制限解放に成功するかもしれません(※GSM/W-CDMA版をCDMA 2000向けにアンロックしても、受け入れるキャリアや使用する方策がないため意味がない)。しかし、そのような脆弱性は重大なものであるため(回線事業者や正規利用者が受けるべき利益を侵害しているということから)、すぐに塞がれるということもよく考えてからキャリアを選ぶといいと思います。

CDMA 2000の、特に1x EV-DOに関する制約事項について

CDMA 2000(※特にKDDIのネットワークおよびiPhone 4Sが対応する1x EV-DO Rev.A)にはネットワークの仕様としてもうひとつ大きな制約があり、音声とデータの両セッションを同時に維持することができません。このため、SMS(KDDIでは〝Cメール〟)や音声通話の着信などでデータセッションは切断され(たとえばSkypeなどがログアウトされ、長電話中にはPush通知なども飛んでこなくなる)、音声通話中に行き先の地図や路線案内を見る・Exchangeサーバーからスケジュールや連絡先情報を参照する、などといった〝スマートフォンとして一般的なこと〟が実現できません。

また、GSMやW-CDMAと違ってWAP Pushという仕組みがないため、より端末側の消費電力が大きいCBSによって携帯電話ネットワークからのプッシュを実現することになります(KDDIは2012年初頭にもネットワーク側でのWAPエミュレーションによるSMS/MMSを実現する予定とされていますが、ここがGSM/W-CDMA事業者との大きな違いになります)。

2011年後半の現段階において、日本国内における大手3キャリアの3Gネットワークの実効速度はどのキャリアも平均的に800kbps程度のために速度としては大きな差異は出ませんが、このように細かな使い勝手に影響するベーススペックが異なることは理解しておいて損はないと思います。

10/14 追記
ソフトバンク版とKDDI版のiPhone 4Sを並べて通信速度を比較する記事が散見されますが、これらの記事のほとんどは〝ソフトバンク版は機種変更・KDDI版は新規契約〟であることに注意が必要です。なぜなら、日本の携帯電話キャリアには業界自主ルールに基づいて総量規制によるトラフィック制限があり、この総量規制の閾値はiPhone向けとしてはかなり低い(どのキャリアもほぼ1日あたり2〜300MB程度の転送で制限に到達する)ので、機種変更である側の回線は記者自身が直近の通信内容からトラフィック制限を受けている可能性が高いためです。
このような記事に掲載された値がベンチマークとして著しく低かったり高かったりする場合は、こういった制限が行われていないか確認する必要があります。また、著しく低い値の場合はレイテンシ(RTT)が低下していないかを見ることである程度は規制の有無の判別が可能です(トラフィック制限は一般に通信速度の制限であって応答速度は制限されないため)。

結局、筆者はどうするの? という点について

なお、iPhone 4のSIMロックフリー版でNTTドコモを回線事業者に選択している現段階の筆者の立場としては、ソフトバンクモバイルもKDDIもiPhoneを利用する事業者としては、どちらにも一歩引いた立場です(iPhone 4SもSIMロックフリー版を導入します)。

また、現段階の3Gデータ回線としてはイーモバイルG4やソフトバンク4Gが速度的にもRTT的にも一歩抜きんでており、ポータブルWi-Fiルーターによってデータをこれらに追い出したほうが、幸せなネットワーク利用ができるような気もしています。

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