DO NOT PAY FOR JAILBREAK YOUR DEVICE!

最近、『NTTドコモのSIMカードでLTEを使えるようにする』『ソフトバンクやKDDIで月額を払わなくてもテザリングができるように』などのフレーズで『CommCenter* patch』や各種キャリアバンドルをインストールする代行業者があるようで、たいへん多くの「どのような関係性があるのか」「無償で提供しているように見せかけてカネを取るのか」「いくら儲かるのか」といった問い合わせを受けています。

これらの悪質な業者と我々は、いっさい関係がありません。Jailbreakは無償で提供されるべきものであり、これを商用利用すべきものでもありません。 [続きを読む »]


2012年10月3日水曜日

世界初のデュアルW-CDMA端末『Coolpad W770』を試す

これまでiOSの強かったエントリ群が一挙にAndroidづいていますが、〝世界初のW-CDMA デュアルSIM端末〟である、中国・宇龙计算机通信科技(Yulong)の『Coolpad(酷派) W770』を紹介します(機材提供: Digital house モバイル トラちゃん、日本語がよい方はこちらへ別途ご相談を)。

アッ、そうだ。これはとても大事なことですが、この端末には総務省による特定無線設備としての技術基準適合証明は存在せず、みなし証明となるFCCやCE等の相互承認協定機関による基準認証も存在していません。

つまり、日本国内で無線電波を受発信すると電波法違反となる可能性があります(ので、メディアなどがわざわざ取り上げる可能性も低いですし、あくまでも個人の責任の範囲でやりましょう)。それでは、600人民元程度(2012年10月現在)の端末で見られる夢のお話です。

Coolpad W770は何がすごいのか

これまでのデュアルSIM端末は、片側スロットがW-CDMA(3G)・もう片方がGSM(2G)というものばかりでした。日本でも馴染みのあるブランドとして『Xperia』(ソニーモバイル)や『Galaxy』(Samsung)シリーズなどもデュアルSIM端末を提供していますが、これらも同様です。

デュアルSIM端末が重宝されるマーケットは主に中国(のような新興国)で、中国国内での一般的な運用方法が「(政府由来の古い電話会社で)エリアの広い中国移動のGSMを音声通話・SMSに」「(業界再編による新興企業で)通信速度の速いW-CDMAの中国聯通をパケット通信に」というものだというのが大きな理由として挙げられます(プリペイド方式が一般的なため、SIMを分けたほうが通信料を安く抑えることができる)。

もうひとつ大手キャリアとして中国電信がありますが、こちらはCDMA 2000です。また、中国移動も3Gサービスを提供していますが、これはTD-SCDMAと呼ばれる中国独自方式です。つまり、中国移動の2G・中国聯通の3Gが一般的な国際規格と共通です(中国聯通も2Gの通信方式は国際規格であるGSMです)。

この状況に打って出たのが、中国聯通の3Gブランド(※NTTドコモ『FOMA』のような)である『wo』です。『Coolpad W770』は中国で一般的な〝メーカー直売〟ではなく、〝3Gデュアル待ち受け対応〟を前面に押し出したキャリアブランド端末としてリリースされているのです。

ふたつあるSIMスロットはどちらもW-CDMA 2100MHz帯をサポートしていて、日本においてはNTTドコモとソフトバンクモバイルの周波数帯が適合します(それぞれFOMAプラスエリア/プラチナバンドを除く)。また、どちらも通常サイズのSIMカード用です。

音声通話・SMSに関してはどちらのSIMも常時同時待ち受けに対応しています。また、通知領域から選択することで、ふたつのSIMのどちらをパケット通信に使用するか、どのAPNを使用するかを簡単に切り替えることが可能です。

パケット通信用に選択していない側のSIMにMMSが到着した場合、そちらのMMS用APNに自動的に切り替えて受信後、元のSIMのAPNに接続を切り替えるといったこともやってくれます。

また、音声通話発呼・SMS/MMS送信に関してはどちらの側のSIMを使用するかをその都度スロット番号で指定することができます。

中国というマーケット事情による制限

ところで、Google PlayやGoogle Appsなどは中国政府の課す制約によってプリインストールされません。ドロワーには見事に中華アプリが並びます。

Android OSのバージョンは2.2 (APIレベル 8)ですので、CyanogenModなどのカスタムROMプロジェクトから対応するビルドの追加パッケージを持ってきてインストールすれば対応可能です(要rooted環境)。

また、特に日本や米国とは端末に求められているモノが異なります。『Weibo』(微博)や『QQ』(腾讯QQ)などは我々はまず使用することがありませんが、中国においては必須ツールです(それぞれ今の日本においてはTwitterとLINEが近いツールでしょうか)。これらを削除するためにもrootedであることが必要です。逆に、端末としてのモデルが古いため(W770自体は2010年のモデル)、『WeChat』(微信)のような比較的新しめのスタンダードは押さえられていません。

Android端末としては比較的プレーンな環境で、以前取り上げた『GOOAPPLE 3G』ほどカスタムされた環境ではありません。AOSPのソースコードをベースに、SIMスロットの番号を選択して通信する必要性のあるところだけ拡張が施されています。このため、中国以外の国で一般的なパスワード付きAPNへの接続が可能です(中国ではAPNでの暗号認証が許可されません)。

パケット通信を正しく接続させるため、APN設定時にちょっとした〝ひとひねり〟が必要です。APN Dial Numberとして〝*99#〟ないし〝*99***1#〟といったダイヤル先番号やスロット番号の指定が必要です(※キャリアとAPNによって異なります)。ここら辺は、パケット通信がなぜ繋がるのか仕組みを理解していれば分かると思います(昨今の通信モジュールは一体型のSoCとなっているために、GPSが3Gモジュールに内包されている=そのためにVITA Wi-FiモデルやiPod touch/iPad Wi-FiモデルにGPSが搭載されていない=ことも知らないようなメディアさんには難しいかもしれませんが)。

ここら辺の詳しい事情を知りたいみなさまにおかれましては、たいへんな良書ですので日経BP社『携帯電話はなぜつながるのか』などを熟読するとよいと思います。日経グループさん、さすがに個人ブログから劣化コピペ記事とか書きませんし。

丁寧なパッケージングと造形

本体を紹介する前にこちらも紹介しておくべきでした。中華端末にしてはパッケージングがとてもよいです。

外箱には装飾オビを兼ねた化粧外装があります。色味も嫌みではなく、本体の質感とも合っています。

パッケージを開梱すると端末本体とご対面です。ホームボタンと、戻る|メニューキーは物理ボタンです。

端末はとても造形がよく、赤銅をイメージさせるカッパーカラーのフレームとマットブラックのボディは精度も高くて感心します。

裏面のバッテリーカバーは金属製で、ウロコ様の模様が刻まれています。ちなみに表面下部のホームボタン周囲などもよく見るとカーボン調の模様が透明アクリルの下側に入っているのですが、うまく撮影できませんでした。こんな端末が日本円で7,000円程度(2012年10月現在)だというのはとてもお買い得だと思います(日本のキャリアモデルではNTTドコモ『ARROWS Me F-11D』の定価が25,200円で最安ですが、他のモデルや他キャリアは端末価格が概ね7万円を超えます)。

昨今の日本向け端末と比較して決定的に違うのが、USB端子がminiBタイプであることです。日本では一昔前の(Android普及以前の)流行ですね。また、端子カバーがありますが、これも一昔前の日本のガラケーのような(容易にもぎ取れる)タイプです。

カメラは800万画素で、(中華端末には珍しく!)表記どおりの画素数です。AFも効きますが、近接撮影と暗所撮影には弱く、そうでないにしても画質はそれほどよくはありません。また、シャッターラグが比較的大きいです。体感的にはシャッターリリースより0.8秒ほどあとに撮影が行われます。

付属品はそれなりに多く、ACアダプタとUSBケーブルに加えてバッテリーチャージャーと1,500mAhの予備バッテリーが1個付属しています(つまりパッケージにはバッテリーが2個入っている)。

バッテリーチャージャーです。バッテリー単体をセットしてminiBケーブルを接続すれば充電できます。持ち歩く際のバッテリーケース代わりにもなりそうです。バッテリーは他に1,300mAhのものと1,700mAhのものが正規品としてラインアップされていますが、中国らしくコピー品もたくさんあります(2,300mAhという見るからに怪しいものもあります)。

……というわけで、どうせまたすぐ週刊アスキーさんとかいうところにパクられるんだろうなーと思うとたいへん気が重いので、簡単にザックリとしたレビューをお届けしました。また、このエントリには様々な利権が絡んでいたため、公開までの時間と範囲に若干のラグがあります。

より高度なことをしたい方へ

いわゆるサービスモードには〝*20060606#〟へダイヤルすることで入れます。例えばベースバンドの片側だけ電源供給を切ったりできるのですが、再び通電させるコマンドがありません。うっかりオフにすると軽く泣きを見られます。

Android 2.2ですのでpsneuter exploitを利用してroot権限を奪取したり、rootedになっていれば様々な応用が利きますが、Android SDKのUSBドライバそのままではSDKがベンダIDを知らないためにadb接続ができませんので、以下を参考にしてどうにかしてください。

$ echo "0x1ebf" >> ~/.android/adb_usb.ini
$ adb kill-server
$ adb start-server

キャリア名データベースがだいぶ古く、Android 2.2時代の水準としてもおかしな名前が表示されます。たとえばソフトバンクモバイルは〝J-Phone〟です。なんと、国境を越えて行きすらしません。90年代です。これは /system/etc/spn-conf.xml を編集することでどうにかできます。

rootedの次に〝morelocale2〟などをしたくなる気持ちは分からないでもないのですが、これをやるとダイヤラとAPN切り替え画面などが正しく起動できなくなくなり、結果的に携帯電話としてほぼ機能しなくなります(電波を受けられなくなります)。このあたりのパッチの提供に関しては方法を検討中です(お急ぎの場合は冒頭のリンク先あたりへどうぞ)。

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