GoogleのAndroidリファレンス端末『Galaxy Nexus』のNTTドコモ版であるドコモNEXTシリーズ・Samsung製『GALAXY NEXUS SC-04D』の端末価格が2月中頃より下落を始め、2月25日までの月々サポート増額施策の終了によってとうとう機種変更でも強制オプションやコンテンツがほぼない一括購入で5,000円程度の店舗が出始めたため(※ドコモオンラインショップでも15,120円)、『P-06C』での契約だったドコモ回線(※miniUIMカードへ交換済)を機種変更しました。
ここのところの急激な端末価格下落は、さしずめXiに対応した〝GALAXY NEXUS LTE〟などの次機種の準備に入ったということでしょうか。
何にせよ、他キャリアでは長期利用ユーザーへの優遇施策が事実上ほとんど存在せず、MNPや新規契約ばかりが価格的に大きく優遇されるため、キャリアにとってはメリットが少ない機種変更に対してでも安価にハイエンド機種を提供しようとする、このようなドコモの姿勢は大変に好印象だと思います。
──とはいうものの、SC-04Dは既に新規契約ならバリューコース一括0円で当たり前・加えてMNPでの新規契約なら4万円を超える(つまり、端末価格以上の)キャッシュバックを用意する代理店も豊富に存在するなどと、ハイエンド端末とは一体何だったのかという状況です。
SC-04D クイックレビュー
Android端末といえば、通話中に音声スタックが落ちる・SMSやキャリアメールのログが自動アップデートなどで吹き飛ぶ・Marketアプリが異様に重い・インタフェースがメーカーごとに180度違う・そもそも通信ができなくなり電源が入らなくなるような重大な不具合をたびたび起こす……などと、様々なメーカーが実用に耐えないような端末を多種乱立させて日々量産しているのが日本国内の現状で、ユーザーの皆さまがたいへんな憂き目に遭う様子をTwitterやブログなどで多く目にすることができます。筆者も通常業務ではこれら〝ガラドロイド〟に、もはやずっと煮え湯を飲まされ続けているような日常です。
SC-04Dは、厳密には〝Pure Google〟ではないものの(※オリジナルのGoogle版『Galaxy Nexus』はPure Google Phone)、キャリアカスタマイズが最低限度にとどめられていて余計なプロセスもそれほど常駐しておらず、国内キャリア端末としては珍しく最低限度の実用性は確保されていると感じます。
ハードウェア自体の完成度も含めて、エクスペリエンスとしてはようやくiPhone 3GSくらいのレベルには追いついてきたのではないでしょうか。
韓国製端末というと、個人的には『mbook M1』のようないくら贔屓目に見てもお粗末な金型品質の製品が印象強いのですが、SC-04Dに関しては『Galaxy Ace』や 『Galaxy S Captivate』もそうだったようにカッチリとして部品精度も大変高いと思います。
〝Pure Google〟でない点として、ドコモがプリインストールする『SPモードメール』『エリアメール』『iWnn IME』が導入済みである点と〝テザリング非対応〟という点が挙げられます(その割に『dメニュー』はプリインストールされず、若干制限のあるWebからのみの利用となります)。
これらはキャリアカスタマイズとしては〝若干〟という度合いですが、常に最新ビルドのAndroid OSが利用できるよう配慮されるグローバル版の『Galaxy Nexus』とは、OSのアップデートが行われるタイミングも異なります(ドコモによるカスタマイズが入るため)。
Android 4.0 "Ice Cream Sandwitch"(ICS)搭載端末としては、ほぼリファレンス端末である所以からも大変標準的なハードウェア構成となっていて、ICS端末に搭載されるべきデバイスがほぼすべて導入されています。逆を言えば、ここにFeliCaやワンセグに代表される日本の〝ガラパゴス〟機能を搭載していくことで〝ガラドロイド〟が産まれる、ということになります。
Android 4.0自体の操作体系としては、アプリケーションからメニュー機能を廃止して(メニューの代替として)画面右上にアクションボードを設けることが強く推奨されていますが、これは大変使いづらい改悪だと思います。Android端末はiPhoneとの差別化のために画面サイズを大きくする端末が多く、片手で操作しようとした場合に画面の上部には指が届きません。また、アプリケーションによってはICS非対応であるため、画面の右下が仮想メニューボタンとなります。使うシーンによって全体のUXがバラバラです。
Googleのこのようなポリシーは頻繁に変更されるため、開発者もユーザーもこれに追従していくことはたいへんな負担ですし、そのせいで今に至るまでアプリケーションの、大枠としての操作体系が統一されることはありませんでした。そろそろ一貫性が欲しいですね。
カメラやNFCといった端末に装備されるデバイスは余計な拡張もされず、アプリケーションもメーカーカスタマイズが施されていないため素のままです。カメラの画質も素直だと思います。
若干コントラストが弱めで色が浅いと感じますが、スナップをここまで撮れるAndroid端末は(カメラ専用にカスタマイズされたAltec Leoなどを除いて)ほぼ他にないと思います。
参考用に、上の写真とほぼ同じ構図をiPhone 4Sで撮影したものです。GALAXY NEXUSのほうがピントが全体に合う傾向がありますが、これはもう好みの問題ではないでしょうか。
端末の充電に関しては、microUSBケーブルが標準の方式ですが、オプションのクレードル向けに3つの接点が露出しています。無接点充電ほどではありませんが、ケーブルをはめ込む必要性がなく便利です。
画面の発色については、Galaxy S世代の『Super AMOLED』ではまだペンタイル配列であることが明らかに分かる荒さでしたが、Galaxy Nexusの『HD Super AMOLED』ではペンタイル配列であるものの4.65インチ1280x720ピクセルという画面解像度は約315ppiということになり、パッと見ではRGBストライプ配列の『Super AMOLED Plus』を搭載したGalaxy S IIなどよりずっと高精細に見えます。iPhone 4/4Sが3.5インチ960x640ピクセルで約330ppiということを考えると、数値上では画素数も解像感もほとんど変わらないということになります。
発色自体はとても鮮やかで見栄えがしますし、iPhoneと比べても遜色ありませんが、やはり有機ELであることを特色づける残像感はあります。焼き付くほどではありませんが、以前に表示していた内容が数秒間かけて徐々に消えていくような感じを受ける場面がたびたびありました。
端末本体は、iPhoneと比べるとさすがに幾回りも大柄です。
ただ、背面がラウンドフォルムとなっているため、手に持った感じではそれほど大きくは感じません。ここではSamsung純正の大容量バッテリーを装着していますが、標準バッテリーでも手に持った感じはそれほど変わりません。
他の国では、出荷状態で大容量バッテリー(2,000mAh)が付属している場合があります(SC-04Dの標準バッテリーは1,750mAh)。
バッテリーの厚みも3mm弱しか増さない、ほんのちょっとの容量増加ですが、GSMと3Gの基地局が混在している地域だと2G/3G間を頻繁に行き来することでバッテリー消費が半端ではないので、このような展開をしているのだと思います。
この大容量バッテリーは、外見をほとんど変えずに装着することができます。
バックカバーを見ると、このように標準バッテリー用のもの(奧側)は反っていますが、大容量バッテリー用のもの(手前側)は本体と形状を合わせるように膨らんでいます。本体のデザイン段階から大容量バッテリーでの展開を視野に入れていたことが窺えます。
どちらのカバーを使用していても、NFCの読み取り性能にはほぼ変化がありません(※標準バッテリーのほうが若干シビアに感じられました)。
iPhoneでもAndroidでも、筆者はいわゆるroot権限が取得できて若干のアプリケーションが入れられればそれでよいのですが、Samsung製端末はSIMロックをソフトウェア的に処理しているために、rootedな環境であれば比較的簡単なバイナリハックでSIMロックを解除することができるので、その手順などをメモ的に公開します。
GALAXY NEXUSのSIMロック解除について
先にお断りしておきますが、SC-04Dはドコモショップでも公式にアンロックを行ってくれますし(※有償・税込3,150円)、Web上にも30USDくらいでロッククリア用のPINコードを発行してくれる業者が存在します。 ここで紹介するバイナリハックは、PINコードを解析するなどの手段ではなく、ファームウェアのアップデートで上書きされる可能性も残る(※通常のOTAアップデートでは基本的に上書きされません)など、その効果が恒久的な性格のものではありません。
もっともこれはドコモショップでのアンロックも同様で、端末本体の特殊なメモリ領域が書き換わった場合は再度SIMロックが施されるため、ドコモショップへ再度持ち込まなければなりません。PINコードはたいていの場合は教えてもらえませんし、端末交換などになるとコード自体も変わります。そういったケースに対しては、下記の手法はPINコードを入力した場合と最終的には同様の処理結果となるため、有用かもしれません。
SIMロック解除のための前提条件
以下の条件が揃っている/揃えられることが前提です。ブートローダのアンロックによって、Google・Samsung・NTTドコモいずれの製品保証も失われる可能性が高いことにもご注意ください。
- rooted (※前提として fastboot によるブートローダのアンロック)
- Busyboxがインストール済および設定済
- 追記
- 以下の手順は、エントリ公開後にxda-developersにてリリースされた『FuckDocomo』と呼ばれるAndroid用アプリケーションでもほぼ同様の内容が実行され、SC-04D上へアプリケーションをインストールするだけで済むため手順も簡単です(※手順によっては端末のIMEIが失われることにご注意ください)。
- Docomo Galaxy nexus Unlock simlock apk - xda-developers
環境はAndroid SDKが動作すればMacでもLinuxでもWindowsでもよいと思いますが、ターミナル/コマンドプロンプトとadbを操作できること、バイナリエディタを扱えること ──の2点も必要だと思います。下ではMacでの操作方法を解説していますが、他の環境でも作業の流れは同様です。
SC-04DのSIMロック解除作業
まず、必要なファイル nv_data.bin をシステム領域から内蔵ストレージへコピーします。
$ adb shell
android$ su
android# cp /factory/nv_data.bin /mnt/sdcard/nv_data.bin
android# cp /factory/nv_data.bin.md5 /mnt/sdcard/nv_data.bin.md5
android# exit
android$ exit
上でコピーした2つのファイルをPC側へ抜き出します。
$ adb pull /mnt/sdcard/nv_data.bin ./
$ adb pull /mnt/sdcard/nv_data.bin.md5 ./
特に nv_data.bin についてはバックアップを作ってから、バイナリエディタでの編集作業に移ってください。
バイナリエディタで180069あたりからの30バイトを FF へ変更します。ビルドなどの違いによって、アドレスが若干ずれることがあるようです。
いずこかのキャリアのHNIの羅列であるかのような数字がすべて FF で埋め尽くされました。
次は181469を 01 から 00 へ変更します。
ファイルを保存したら、新しい nv_data.bin のハッシュ値を保存したファイルを作成します。
$ echo -n `md5sum nv_data.bin | tr 'n' 'X' | sed 's/ .*//'`>nv_data.bin.md5
これでPC側での加工は終了です。端末側の内蔵ストレージへ push しましょう。
$ adb push ./nv_data.bin /mnt/sdcard/
$ adb push ./nv_data.bin.md5 /mnt/sdcard/
端末側でファイルを書き換えます。
$ adb shell
android$ su
android# mount -o remount,rw -t ext4 /dev/block/mtdblock0 /factory
android# cd /factory
android# cp /mnt/sdcard/nv_data.bin ./
android# cp /mnt/sdcard/nv_data.bin.md5 ./
ファイルの権限と所有者を上書きします。
android# chmod 700 ./nv_data.*
android# chown radio.radio ./nv_data.*
端末側のバックアップファイルと複製ファイルを上書きします(複製ファイルの改変が検出されるとバックアップから書き戻されてしまうため)。
android# cp ./nv_data.bin ./.nv_data.bak
android# cp ./nv_data.bin.md5 ./.nv_data.bak.md5
android# cp /factory/nv_data.* /data/radio/
端末を再起動します(ここでの reboot コマンドでなく、通常どおり電源を切ってSIMを差し替えて起動などで構いません)。
android# reboot
SIMを差し替えて再起動後にPINコードを聞かれず、他キャリアのネットワークを認識して接続できれば完了です(ここでは『3 HK』のSIMを挿して動作確認しています)。失敗している場合、たいていは設定画面でIMEIが〝不明〟となります。
ところで、SC-04Dはfastbootによってブートローダを再ロックすることができます(※ほとんどの他端末ではこれが不可能です)。これには、VUP+VDOWN+POWERボタンの同時押下によるブートローダモードで、以下のようなコマンドを使用します。
$ fastboot oem lock
ブートローダを再ロックしてもrootedな環境は保たれ、SIMロック解除状態やシステムの環境も変更されません。ただし、ブートローダを再度アンロックするとシステムがファクトリーリセットされるため、もう一度環境を構築し直す必要があります。
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