あっという間に当サイト一の人気エントリとなった前回のSuica内蔵エントリに続いて、iPhoneへEdyを追加して内蔵してみました。
複数のFeliCaチップの可載性について
FeliCaチップ搭載のICカードは、異なる種類(属性)のカードを3枚まで重ねて使用することができる〝アンチコリジョン〟に対応していることがあります(※参考)。アンチコリジョン対応カード(たとえばSuica)と非対応カード(同Edy)が重なっている場合、それぞれのカードの発振時間が異なるためにリーダーがそれぞれを検出できることがあります。たとえば以下のような組み合わせ例があります(※必ずしもこの組み合わせで使用できるというわけではありません)。
- エラーの起きない例
- Suica+Edy+nanaco(QUICPay)
- Suica+WAON+社員証(電子マネー非搭載)
- エラーの起きる例
- Suica+PASMO+Edy
- PASMO+Edy+WAON
アンチコリジョンが働くことが期待される組み合わせでも、決済端末の仕様によってはエラーが起こったり、希望とは違う電子マネーから決済が行われてしまう場合もあります。ローソンなどはこの問題を防ぐため、利用可能な電子マネー一覧を客側タッチパネルで確認させる仕様になっています。
現実的には、表裏に2枚ずつ計4種類程度のFeliCaチップ内蔵が可能なのではないでしょうか。
首都圏を行動エリアとしているとSuicaがあればほぼ事足りるのですが、Suicaが使用できないシーンで全国的に使えそうな電子マネーとなると、Edyか流通系のWAONやnanacoということになりそうです。
特定の流通に縛られるのは厳しいので、今回はそのどちらのグループでも使用できるか代替選択肢がありそうなEdyを選択しました。Edyは(今のところは)クレジットカードの発行元を問わずにオンラインチャージの設定が可能です。
手元にはEdyの内蔵されたカードとして、銀行のICキャッシュカードや『ANAマイレージクラブEdyカード』があるのですが、さすがにこれらを溶解してしまうと実生活でちょっと困ってしまいます。何か、新規に発行する方向で手を打ちましょう。
Edyカードの溶解
電子マネーとしてのEdyには、カードタイプ以外にもストラップタイプの『Edy ストラップ』があります。これを分解して基板を薄く切削して内蔵する、という手法もあるようです。今回のエントリはカードを溶解しているため使用していませんが、人によってはそちらの手順のほうが楽に感じるかもしれません。
銀座ルノアール発行の『ルノアールEdyカード』はデポジットが要らず、店頭で気軽に発行できます。
今回使用したカードは残額がそれなりに残っていて、溶解に失敗すると文字通り残額が溶けてなくなるので、みなさまにおかれましてはちゃんと使い切ってから実験に及びましょう。
圧着部を外すため、カードの端から四辺2.5~3mm付近を切除します。FeliCa全般に言えることですが、この内側ぎりぎりまでフレキシブル基板が迫っています。
溶かすところは前回と同じなので省略しますが、今回も横着をして表面皮膜などをはがさずジクロロメタン溶液に漬けています。おおよそ気象条件がいいとも言えない環境(※この日、東京は零下2度を記録しました)で4時間かからず溶けきってしまいました。
今回のエントリから残額確認用にキングジム『RELET』を導入しました。あまりにもあっけなく溶けたので半信半疑でRELETをかざすと、ちゃんと残額が表示されます。
バックケースへのEdyの内蔵
ところで上のほうでアンチコリジョンなどについてひととおり解説していたのは何だったのかという話になりますが、いくらふだん乗るJR東日本や東京メトロ・都営地下鉄で大丈夫でも、10年に1回も乗らないであろう国際十王交通バスなどに乗車した際にトラブると非常にめんどくさいので、前面にSuica・背面にEdyという組み合わせで以下の工程を進めます。
磁性シートを前回とは違う、玉川製作所『Progress』へ変えてみました。貼ってはがせるとかそういう付加機能よりも、この背板が金属ならばアースとしての効果が期待できるかなと思ったのですが、結果的にきれいに塗装された樹脂でした。『flux』と比べて、磁性シートを外装シートから取り出す手間がないのは楽です。
若干サイズを調整しなければ背面に収まらないため、周囲を切り落とします。
磁性シートの表裏や有無でiPhoneのリアパネルを正常に通過/遮断することを確認します。
位置やサイズはこんな感じです。
組み立ててRELETやPaSoRiにかざしても読み取れることを確認します。今回はLCD背面(フロント側)にSuica・バックケースにEdyなので、iPhoneの表裏で違うカードが読み取られます。
アンチコリジョンが有効な範囲内に限られるものの更にフレキシブル基板を重ねて他の電子マネーを内蔵することも可能ですが、ひとまずこの状態でPaSoRiによる認識の様子を動画撮影してみました(埋め込みの動画再生がうまく行かない場合はこちら)。
フロントユニット側のSuica内蔵の改良
ところで、RELETは背面のEdyであれば認識できますが、前回のエントリ追記の方法で内蔵した(前面の)Suicaは認識することができません。
製品の取扱説明書には、 注意事項として〝本製品が金属などの材質のそばにある場合、ICカードとの通信に失敗して、残額の確認ができないことがあります〟〝本製品の近くに金属または電磁波を発生させるものがあると、干渉によりICカードとの通信ができない場合があります〟などとの記載があります(複数のカードがある場合に正しく作動しない旨も表記あり)。
iPhoneのフロントユニット側には、LCDパネルのすぐ後ろにステンレススチール製のミドルフレームがあるため、これが邪魔をしているようです(※PaSoRiなどではこの状態でも読み取りが可能です)。これを改善してみましょう。
まずフロントユニットだけを取り外した状態で、LCD裏面部分へフレキシブル基板を置いた状態ではRELETでも読み取れることが確認できます。
では、ミドルフレームに磁性シートを敷いた状態ではどうかとテストしてみると、エラー表示が出ます。やはり、フレームの金属が影響しているようです。
磁性シートは、『flux』でも『Progress』でも変化ありません。磁性シートは反対面の磁性をカットするはずですが、その能力がこの状況下では今ひとつ弱いようです。
では、磁性シートを重ねてみるとどうでしょう。
結論としては、ミドルフレームのLCD側に磁性シートを2枚重ねるとRELETでも読み出せるようになりました。
そのまま組み立てて普段遣いのメタルバンパー(M Design Slim Bumper)へ収めても、RELETは残高を正しく読み取ることができました。つまり、ミドルフレームの材質による磁界への影響が強かったようです。
ひとつ残った問題として、フレキシブル基板と磁性シート2枚を合わせると0.5mmほどの厚みになるため、フロントユニットが少し(0.2mmほど)浮くような感じがあります(左が浮いたもの、右が正常品)。
つまり、1枚の磁性シートでもっと指向性が強力なものがあれば、この問題は解決できそうです(※そのような製品がありましたらぜひお知らせください)。
フロントユニットの〝浮き〟への対処
磁性シートを2枚重ねなくても、PaSoRiでの読み取りや、自動改札・Suica対応自動販売機の利用、コンビニでの決済やチャージなどは実行できます。つまり、手元での残高確認という利便性をどこまで追求するかという点とのトレードです。
また、フロントユニットが浮いた状態だと、このようにLCDへ偽色が表示されたり、衝撃でLCDの表示が波打つような挙動が起こることがあります。
これは、LCDユニットの背面にフレキシブル基板や磁性シートを内蔵したことで衝撃や荷重を逃がす余裕がなくなったことと、フロントユニット周囲4点が浮いているためにユニット自体がたわんで余計な伸縮力がかかることが原因です。
この状態だとフロントユニットにつられてホームボタンも浮き上がることになるため、若干の陥没が見られます。
フロントユニットとミドルフレームの隙間を何とかすればよい話なので、ここも対策しましょう。
ホームボタンに関しては、iPhone 4とiPhone 4Sで大きく構造が変わった数少ない点のひとつですが、iPhone 4Sではホームボタンパーツ側に埋め込まれた金属プレート(角形)を、iPhone 4でミドルフレーム側に埋め込まれていた金属プレート(丸形)を利用してかさ上げして対処しました。
パーツとしてはこのようなパーツです。1枚が0.2mm程度の厚みです。この円形プレートを2〜3枚程度重ねてiPhone 4Sの金属プレート(※下側の角形パーツ)の下側に仕込むことでボタンの陥没は対処することができました。
フロントユニットの浮き防止に関しては、ミドルフレームの4隅に同じ金属プレートを貼り付けることでゆがみを少なくさせて対処しました。
繰り返しになりますが、この対処は通常のチャージや決済にはほとんど影響がなく、RELETのような認識力が特に弱いリーダーに対してのひとつの改善案です(また、もう少し強力な遮断性を持つ磁性シートがあれば不要と考えられます)。
RELETの読み取り性能がもう少し改善されて、ついでにUSB接続するとFeliCaリーダーとしても動作するような『RELET 2』がリリースされるとうれしいですね。
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